2013年4月6日土曜日

#71 耳を澄ませば

スマホが音をたてたような気がしたので、とりあえず、8時半に目覚める。週末は暴風雨の予報だが、幸い雨も降っていないし、風もほとんど吹いていない。
三陸新報に目を通し、朝御飯を食べ、出発する。大分システマチックに動けるようになってきた気がするが、まだ熊野にいたときのような調子にはいかない。

まず、オイル交換をと、宮城トヨタに向かう。この辺りはカーディーラーの銀座になっており、特に自分のクルマはトヨタのお店ならどこでも取り扱っているので、どこのお店にお邪魔してもいいのだが、やはり兄が勤めていたトヨタ店を選んでしまう。
アポなし突撃だったので、あいにくピットは満員。17時からの予約をしておく。

その後、唐桑半島へ向かう。カーナビが示すルートにそって向かうと、気仙沼を象徴する「第18共徳丸」が目に入る。昨日の夜も横を通ったが、やはり大きい。

三重の先輩から、気仙沼市との賃貸借契約が満了し、船主は解体の意向を示しているとの情報がもたらされた。去年の6月に立ち寄った時は、自衛隊の演奏が行われており、偶然三重から来た自衛官の方とお話をする機会があった。保存か撤去か。悩ましい課題である。

隘路を通り抜け、唐桑半島先端のビジターセンターへ。風光明媚なよい場所だが、残念ながら来客は私一人。過去の津波堆積物の展示や、気仙沼市内の被災写真を見る。少しずつ気仙沼の街がわかってきているので、写真の状況からこれだけきれいになったのかと思うと、各位のご尽力に頭が下がる。
センター最大の売りである、津波体験館は絶賛リニューアル中。オープンは4月27日の予定。
以前お話を伺ったIさんは不在だったが、物産コーナーには新商品が置かれていたので、Tシャツやステッカーなどを買い求める。「大漁」と書かれた小物入れは、COCO唐という地元グループが製作されたもの。スマホにちょうどいいサイズだが、職場で使ったら目立ちすぎるきらいが...
ガイドブック気仙沼見聞思考は、被災直後の気仙沼と今の様子、仮設商店街の地図が掲載されていて重宝しそうだ。
少し周辺を散策し、御崎(おさき)神社へ。いつもと同じことを祈る。
フロントガラスに雨滴が付き始めたが、なんとか持ちそうな雰囲気。北へ向かう途中、45号線に出るところで道を間違えてしまうものの、再生した一本松、基礎のみを残すホテル1000などを横目に、大船渡へと向かう。
大船渡碁石海岸インターで三陸道をおり、45号線を走るも、加茂神社周辺は大きく景色を変えていた。新しい店舗や家々...気仙沼でも南三陸でも見なかった光景が現れた。勢いを感じる。

12時半過ぎに、大船渡市役所派遣時代からお世話になっているKojikaに到着。マスター、奥様ともにお元気そうで何より。
おいしいカレーにいつも満足
マスターと久々の談笑。いつもマスターの企てるプロジェクトには度肝を抜かれる。そしてそれが着実に前に進んでいる。このパワー、このスピード。派遣期間中にお目にかかることが出来そうだ。
「気仙沼の友達を紹介してやっぺ」と、急きょ決定し、気仙沼に戻ることになる。
愛車86をマスターに託し、自分はマスターのアルファ147を借りる。
停車中に撮影
クルマ好きのマスターが22万円で拾ってきただけあって、エンジン始動と同時に警告メッセージ...
途中「SELESPEED SYSTEM FAILURE」の表示がビープ音とともに頻出し、かなり緊張を強いられるが、無事に気仙沼のベースキャンプ付近にたどり着く。アルファは内装に若干難があるため、夜に乗るクルマなんだと思う。

まずは蕎麦屋さんの小野家へ。ひとまずざるそばを食べる。こちらの店主も大のクルマ好き。AE86が津波により水没してしまったそうだが、20バルブの4A-Gにエンジン換装を行い、復活した模様。
そして、ベースキャンプの目と鼻の先、菅原歯科医院へ。ちょうど歯医者さんを探していたところで、クルマ好きの先生を紹介していただく。

マスターは、急きょ大船渡にリターンしてしまったので、先生と二人っきりになり、いろいろお話をさせていただいた。ベースキャンプ周辺は、津波により2m強浸水している。愛車マルニ(BMW2002)とスーパー7が両方とも水没の憂き目にあった...
過去のクルマ遍歴やもろもろについてや、防潮堤のことなど。赴任以来、初めて地元の人と時間を
かけてお話しすることが出来た。

その後、オイル交換へ。三重から来た珍しい客に、店長さんや課長さんなどごあいさついただく。しかも、鬼のように汚かったクルマを洗車していただいた。翌日暴風雨のため見合わせていたが、久々につるつるのボディに触れることができた。
MTG(宮城トヨタグループ)オリジナル
18時から、第14回防潮堤を勉強する会を聴講するため、市民文化会館へ。会場はほぼ満席、たくさんのテレビカメラが並んでいる。
「津波強度と被害」などで著名な津波研究の第一人者、東北大名誉教授の首藤先生の講義は、津波対策全般に対し、網羅的に触れられており、集団移転や防潮施設の成功事例、失敗事例、施設の維持管理の重要性などが丁寧に説明された。
一時間半ほどの講義のあと、フロアから質問の時間となり、4名が質問されたが、若い質問者はなぜか東北の言葉を話していなかったことが気になった。私の職場ではすべての方が東北弁を話されているのだが...

会場を後にする頃には、結構な雨が降っていた。三重では特に何も思わない降水量でも、この地では気が気ではない。何事もないことを祈ろう。