2013年5月12日日曜日

#107 もう一つの被災地

昨日の天気予報では、晴れて暖かく、絶好のお出かけ日和って言っていたはずなのに...曇りで寒い。なんか裏切られたような気分になる。
何を着ていこうか悩むが、とりあえずヒートテック的なものは止めておく。その代り、上着をもう一枚持っていくことにする。
クルマを始動すると、なんと気温は10℃...

行きつけのコイン洗車でクルマを洗い、内陸に向かって284号線を走る。県境に近づくころには外気温計がグングン上昇、いつの間にか20℃になっている。外を歩いている子供たちは半袖、窓を開けて走るのにちょうどいいくらいの陽気だ。しかし、この温度差。着るものも悩むが、体がついていかない...

一関市川崎町あたりでおなかが空いてきたので、なんとなく冷たいうどんかそばが食べたいな~と思っていた頃、タイミングよく「麺工房いより」という看板を見つけ、Uターンして戻る。
店内は程よく混んでおり、長テーブルの一角を陣取る。ざるそばを注文すると、お店の方が間髪入れず「大盛りで!」と突っ込まれたので、「はい...」と返事をする。まさに、ファストフードの「ご一緒に〇〇いかがですか?」戦法。
てんこもり
そばでおなか一杯というのも珍しいが、おいしくて雰囲気もいいので、またやってくるかもしれない。
284号線から県道に入る。雑木林を抜ける、緩やかにアップダウンした道。新緑も美しくなってきた。

栗原市にある若柳駅に着く。若柳駅は、栗原電鉄、後のくりはら田園鉄道の駅だが、廃線となった今はどこかに繋がる路線があるわけではない。4月から10月までの月1回行われる「くりでん保存会」による500m往復の体験運転のために整備されている。
今日の目的は体験乗車だったのに、駅前には無情にも「本日のイベントは終了しました」と。廃線前に乗ったことがあるので、また来ればいいか...
とてもいい雰囲気の若柳駅
指をくわえて見ているだけ...
ピカピカのKD95
廃線前のくりでん 石越駅にて 2001年
近接する物産館などを覗いてから、いざ栗駒山へと向かう。田植えが真っ盛りの田園風景を抜けると、徐々に山が近づいてくる。山腹崩壊の現場が目につき始め、所によっては巨大な法枠(吹付枠工)が施行されている。

2008(平成20)年6月14日、岩手県内陸南部を震源とするM7.2の「岩手・宮城内陸地震」が発生した。河道閉塞により水没した旅館からの救出や、豆腐のように崩れた山腹の映像を思い出す。
東日本大震災にのみ注目が集まるが、岩手・宮城内陸地震からまだ5年足らず。

地震の影響がところどころ残るものの、道路は復旧済みであり、順調に山を登っていく。
道路沿いには、豪雪地方を物語る、路肩の位置表示をするポールが林立しており、未だ残る雪の壁に囲まれたところは、相当の積雪深。
乗鞍スカイラインっぽい
快調に走り、いわかがみ平に到着。17時に道路が閉鎖されるため、レストハウスまで行くことは出来なかったが、駐車場からでも十分に絶景を楽しむことができる。ただ、麓の方を眺めると、ところどころに爪で引っかかれたような山腹崩壊があった。
5月の雪
標高1113m
金華山に立つ信長の心境
少し下ったところに、ハイルザーム栗駒という施設があったので、迷わず温泉に入る。この地方ではあまりない露天風呂が魅力的だ。

待合室にあるテレビに、「平成20年岩手・宮城内陸地震 栗原の記録」と書かれた張り紙が掲げられていたので、視聴することにする。山地災害と津波、災害の内容は異なるが、発災後の取組内容は東日本大震災と規模を除いて大きく変わることはない。

売店を物色していると、栗原耕英地区の記録紙のPOPを見つけるが、残念ながら在庫なし。近隣の施設にも問い合わせていただいたが、既に閉館...係の方が気を使ってくださり、東北森林管理局発行の「山地災害の記録」という冊子をご恵与いただいた。
ちなみに、NHKのピンポイント天気予報では栗原耕英地区が必ず表示される。

まだ日も高いので、荒砥沢ダム方面へと向かう。天然林の中に切り拓かれた道を行く。なだらかな傾斜やカーブが気持ちいい。目につくところは殆どが針葉樹の三重では考えられない光景。どちらかと言えば、信州をイメージさせる。

途中、鉱石の露天掘りのような場所を見かける。奈良県十津川村や和歌山県那智勝浦町など、紀伊半島大水害の被災地もスケールを測りかねるぐらいであったが、こちらもその規模の大きさに驚愕する。
グラウンドアンカーや法枠が小さく見える
荒砥沢ダム上流では、大規模な地すべりが発生しており、ダム堰堤付近からもその姿をうかがうことが出来た。
左右両側に崩壊地が存在
地震発生から5年が経過、この地域をパッと通り過ぎただけでは災害の痕跡を見つけることは難しい。しかし、大規模な復旧工事は継続して実施されており、内陸と沿岸の二正面作戦ではリソースが不足してしまうのはやむを得ない。

日が沈み、気温も下がってきたので、そろそろ帰還することに。一関の街を抜け、284号線で気仙沼へ。夕食はいつものこけしで、カレーを注文する。なんでもありの、ファミリーレストラン顔負けのラインナップ。
気仙沼の気温は7℃。海沿いは暖かいと思われるのだが、これが「やませ」なのだろうか。